強引な次期社長に独り占めされてます!
それからは、楽しそうに差し出してくる食べ物を遠慮した。

「試しに少しだけ飲むか?」と、言われて飲んだビールの苦さに渋面を作ると、死神さんは爆笑をするし……。

同じ会社の人相手なんだから、会話の流れは普通は会社の事が中心になりがちだけど、なんとなく会社の話は避けて会話を続けた。

そもそも、こんなに私が男の人と打ち解けて話をすることなんかない。

でも、何となく昔流行ったおもちゃの話から、最近のトレンド交えての会話は思っていたより楽しい。

途中からお酒は薄目のチューハイを頼んで、ちょっとほろ酔い気分でカラオケにも行って……。

死神さんは大きな鎌を持ちながら最新ロックを歌うから、何だか可笑しくてお腹を抱えて笑ってしまった。

もう一生分は笑ったんじゃないかってくらいに笑って、カラオケが終わると楽しい気分のままで駅まで歩く。




***



「お前。駅から直で帰れるか?」

死神さんはちょっぴり心配そうに私を見ていた。

まぁ、少しだけ酔っぱらいかもしれないけど、さっき程じゃないし。たぶん空腹に飲んじゃったから、さっきはダメだったんだと思う。

「大丈夫ですよ。楽しかったですー」

「そんなしゃべりで、大丈夫かが若干心配なんだが」

死神さんはたまに年上風を吹かすなぁ。きっと年上には間違いないんだろうけど。

「駅降りたら、タクシーで帰りますから平気ですよ~」

「じゃ、送るのは途中までな?」

23時の駅前は、仮装したお化けたちばかりになっていて、やっぱりその様子は不思議な世界。

それを横目で眺めながら改札を抜け、階段でコケそうになってお腹を抱えられた。
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