強引な次期社長に独り占めされてます!
***


「あんたたちねぇ。お客じゃないからいいって事にはならないのよ?」

あ……どこかで聞き覚えのある声。

たぶん、野間さんの声だ。
なんで野間さん、不機嫌なの?
それにしても、どうして野間さんがここに?

私、眠って……。
あれ? 私は仕事中じゃなかった?

パチリと目を開いたら、よく知っている野間さんの心配そうな表情と、全然知らない男の人の顔が見えた。

「……目が覚めた?」

野間さんの後ろに見えるのは何となく青みががった白い天井と、無機質な蛍光菅の明かり。
そして感じる臭いは薬品のキツイにおい。

「ここはどこですか?」

何となく目がくらみながら、眉をひそめる。間違いなく知らない場所だ。

「ええ!? 次に私は誰とか、使い古した言葉くる?」

見知らぬ男の人に言われて彼を見る。

あなたは誰だとは思うけど、別に私は私です。松浦可南子、23歳。経理事務歴1年。

そして見知らぬ男の人は、どこかで見たことがあるような無いような?

「とにかく、高井。お前は加害者なのだから、謝るのが先じゃないか?」

頭の方から、また別の男の人の声がして、見ようと動きかけたら後頭部に激痛が走った。

「ああ。無理はするな松浦。ここは病院だから安心しろ」

そう言って視界に入ってきたのは、経理課の上原主任だった。

びょ……病院?
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