強引な次期社長に独り占めされてます!
「す、すみません。それならそうと、どうしておっしゃってくださらないんですか。私はてっきり可南子に怪我させた本人かと……もう!」

「話をするチャンスがあれば、割り込んでいた」

淡々と話ながら、主任はネクタイを結び直している。

何だか急にいつもの“上原主任”だ。
そう……上原主任は“動じない人”だと思う。動じなさ過ぎて驚きだけど。

「じゃあ、松浦。僕は社に戻るが……」

立ち上がりながら主任は私を振り返り、それから片方の眉を上げた。

「いきなり起き上がるな。仕事のことは心配するな。無理も無茶もするな」

ビシッと指を差されて瞬きを返す。

「はい……」

返事をしたら、少しだけ目元を微笑ませて、主任はどこに置いてあったのかコートを羽織ると病室を出ていった。

「……あれが、あんたの上司?」

どこか感心したように呟いて、芽依は誰もいなくなったパイプ椅子に座る。

そして芽依は気にしなさ過ぎだと思うけどさ……。

「けっこうなイケメンじゃない。あんなのが普通に近くに座っていたら萌えるね~」

イケメン……か。うん。そうかも。

あまり男の人と視線を合わせることも少ないから、今日はまともに主任の顔を見たかもしれない。

髪はサラッサラだったし、鼻筋はすっきりしていたし、眉毛は真っ直ぐで実直そうで、ちょっとだけ奥二重っぽくて、目は無表情だと怖いけど。

「そっかぁ。事務職はスーツだよね。イベントスタッフなら、もっとラフな格好してるか」

よくわからない理解をしている芽依を黙って見つめていたら、彼女に苦笑を漏らされる。
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