強引な次期社長に独り占めされてます!
「社交辞令でも、キチンとお返事しないとやはり失礼でしょうか?」

普通の“松浦可南子”として男の人と食事に行くなんて想像もつかない。
そんなの緊張してしまって嫌だし。

「気を持たせたくないなら、断るべきだな。スルーするのは……男としては少し可哀想に思う」

主任はコートを脱ぎながら、無表情に席に向かった。その後ろ姿を見て……そういうものかとも思う。
確かに話が中途半端になったけど、誘われたのも私だものね。

部署のドアを開けると、社員入口に向かうスタッフジャンパーの後ろ姿が見えた。

「高井さん」

呼び止めると彼は振り返り、破顔して近づいてくる。

近づかれても困るけど。

「えーと……お誘いありがとうございます。ですが、男の人とご飯を食べにいくつもりもありませんので、お断りします」

「うん。もっと体調良くなってから誘います。ところで、松浦さん彼氏いるのかな?」

は? いきなりなんでしょう?
無言でいたら、高井さんは微笑んで数メートル前で立ち止まった。

「じゃ、俺はこれから会場設営に行かなきゃならないから。また今度」

「え。あの……?」

手を振りながら、そのまま走り出した高井さんの後ろ姿を見送った。

……えーと。その。

あの人、私の言ったこと理解しているのかな。 

私は今“男の人とご飯に行くつもりはない”って言ったんだけど。

きっと絶対にわかってないよね?
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