強引な次期社長に独り占めされてます!
大人しくドアを閉め、コートを脱ぎながら席に向かい、椅子にコートをかけていると、俯いて肩を震わせている主任が目に入る。

……主任、笑ってる?

まぁ、いいか。仕事に関係なさそうだし。

席についてパソコンの電源を入れていたら、同じ経理課の芳賀さんが出社して、私の顔を見ると華やかな笑顔で近づいてきた。

「おっはよー、松浦ちゃん。復活?」

芳賀さんは二年先輩。ストレートの長い黒髪と“華やかさ”が似合う美人さん。
綺麗だけど、たまに毒舌で、なんでもポンポン言う姿は憧れでもある。

「復活したかはわかりませんが、触らなければ痛くありません。お休み頂いてしまって、ご迷惑おかけしました」

「私は大して迷惑かかったわけじゃないし。全く、女の顔に傷つけるなんてサイテーよね。痕が残ったら責任とってもらいなさいよ」

それは遠慮します。責任とかなんとかって……ちょっと重い。

「まぁ、いいわ。とりあえず伝票整理があるからそれやっつけちゃいましょ。後は主任が受け持ってくれてるから」

「あ……はい」

張り切る芳賀さんから今日の仕事を受け取り、後ろの席の主任を振り返った。

私のちょうど真後ろが上原主任の席。
真横が芳賀さん、それから他の経理課の面子が数名、デスクを並べて仕事をしている。

よく言えばアットホームな私の職場。
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