強引な次期社長に独り占めされてます!
「おしい。気がつかなきゃいいのに」

「気づかない人はいませんから!」

「それもそうだな」

主任はあっさり引き下がってくれたけど、ふらっと歩きながら、また私の手を取った。

「ほら。行くぞ?」

……手を離してくださいと、言っても無駄なんだろうな。

諦めて歩きだすと、主任を無視して水槽の中を眺める。


水族館は嫌いじゃないかもなー。

運動は苦手だからアクティビティな遊びは好きじゃないし、賑やかすぎる場所も……眺めているだけなら楽しめるけど、渦中にいたいとは思わない。

だからと言って、絵画みたいな何かを眺めて歩くような高尚な趣味もないし……。

私の趣味ってなんだろう。

そう考えて、熱帯魚のコーナーで足を止めた。


燃えるような赤や目の覚めるような青。中には縞模様や、光に反射して虹色に輝くような魚もいる。

それがとても綺麗。

……いいなぁ。綺麗で。


「……キラキラしてて、綺麗」

童話の中のお姫様も綺麗だ。王子様は決まって綺麗なお姫様を選ぶよね。綺麗で、純粋で、優しいお姫様。

お姫様に憧れていたのは、いつまでの事だったかな。

童話は好きだけど、私はお姫様にはなれないんだと気づいたのは……。


考えていたら、髪が引っ張られた気がして視線を動かすと、くるくると主任が人の髪を指に巻き付け始めていた。

こ……この人は、どうしてこう突然なにかを始めるの?
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