強引な次期社長に独り占めされてます!
童話って夢があるもん。夢のなかでふわふわ幸せになれるもん。

現実で嫌な事があっても、夢の世界にいられれば、次の日には嫌な事は忘れられた。

でも、今現在目の前の現実は、とても現実とは思えない亜空間。

……どうせ私を“私”だと、認識できる人は、きっと芽依のみだと思えるこの状況。

一夜の夢なら、楽しむのもいいかもしれない。

「例えば……楽しい事って、なんですか?」

カクテルを飲んでふわりと笑うと、死神の彼も口元を微笑ませ、私のフードに手をかける。

「フードを外して、世界を広く見てみるとかはどう?」

パサリとフードを外されて、それから彼は私の髪をかき上げ、そのまま耳にかけられた。

微かに耳に触れ、離れていく暖かい指先。

仮面の奥の表情はわからないけれど、じっと見つめられているようでドキドキが止まらない。

これくらいでドキドキしてちゃいけないのかもしれないけど、やっぱりドキドキするものはしちゃうし。

これでも23歳だもの。大学時代に友達の紹介で付き合ったこともあるし、まるっきり男性経験がないわけでもない。

この性格だから、あまり楽しい思い出はないけれど。

これは“誘われて”いるんだろう。

見知らぬ人と見知らぬままに、楽しんでしまうのもアリなんじゃないかな?
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