恋は死なない。
大きな音とともに路面をたたきつけている雨を見つめ、涙をこらえて言葉を詰まらせる佳音の横顔を、和寿はじっと見つめている。
「僕は……、もうとっくに、戻れなくなってる」
絞りだされるようにつぶやかれた和寿の言葉が耳に入ってきて、佳音は和寿を見上げた。和寿の眼差しに射抜かれて、佳音はその意味を探るように見つめ返す。
すると、和寿は自分の言葉を補うように、佳音の両肩に手を置いて抱き寄せると、その唇に自分のそれをそっと重ねた。
佳音の唇の柔らかさを確かめながら、自分の想いを語るような和寿のキスに、佳音はどう反応していいのか分からなかった。思ってもみなかった突然のことに、心も体も固まってしまっていた。
佳音がずっと心の中に抱えていた想いを、和寿も共有してくれていたということだろうか……。
このまま、和寿の背中に腕を回して抱きしめ返したら、和寿はもっときつく抱きしめてくれるかもしれない。
想いのすべてを語って和寿を求めたら、和寿はそれに応えてくれるかもしれない……。でも……。
キスを受けながら、佳音の思考は葛藤で満たされた。
迷いの中で唇が離されたとき、佳音の両目からは知らないうちに涙がこぼれ出ていた。
和寿に見つめられて、佳音は自分の心をどうやって言い表すべきが、本当に分からなかった。