恋は死なない。

 雨の夜





どんなに夜遅くまで仕事をしても、……たとえ泣き明かした夜の次の朝でも、佳音はきちんと7時には目を覚ました。

どこに勤めに出るわけでもなく、この工房を切り盛りしているのもたった一人。だからこそ、自分の中に一定の規定を作っておかないと、生活全体が緩んで仕事にも支障が出てしまうからだ。


とはいえ、佳音が独り暮らしを始めて、こんなに眠れないほど泣いた夜はない。
自分の体のどこに、こんなにも涙が詰まっていたのかと思う。しまいには、何が悲しくて、どうして自分が泣いているのかも分からなくなった。

けれども、どんなに泣いても、こうやって朝はやってくる。コツコツと仕事をこなしておかないと、“納期”というものが迫ってくる。
それが、今の佳音の現実だった。


泣き腫らした顔を洗って朝食を済ませると、身支度を整える。それから工房やダイニング、玄関回りなどの掃除をして、花の手入れをする。昨日と同じことを繰り返して、9時には工房を開け、ドレス制作の作業に取り掛かる。


ウェディングドレスを作り上げる膨大な過程は、佳音の頭の中で緻密に組み立てられていて、それを一つ一つ積み上げて、ドレスは形作られていく。佳音は毎日せっせと、その一つ一つに向き合って心を込めて作業を行った。



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