恋は死なない。



真琴の心配はよそに、真和は起き上がって弟に向かっていく。その時、三歳の妹琴香が並べていたママごとセットが蹴散らされる。


「もお!!お兄ちゃんたちが、メチャクチャにしたーー!!」


その鳴き声を聞いて、今度は赤ちゃんの円香までも泣き始めるた。
てんやわんやしながら、真琴は佳音に声をかける。


「……佳音ちゃん。ちょっと落ち着かないとは思うけど、どうぞ座って」


そうは言われても、佳音は、普段接することのない賑やかさに戸惑ってしまい、とてもソファに座っていられるような状況ではない。

そこへ玄関のドアが閉まる音が聞こえて、


「ただいま〜」


と、救いの神の声が響いた。


「あっ!お父さんが帰ってきた!」


「お父さん、おかえり〜!」


ケンカをしていた男の子たちも、泣いていた妹も玄関に駆けつける。


それからリビングに姿を現したのは、両手と足に子どもたちがまとわりついた古庄。
そのこの世のものとは思えないような端正な容貌は、佳音が恋したときとまるで変わらなかった。恋心とは関係なく、佳音の胸は無条件にドキンと反応してしまう。

年齢を重ねて人間としての厚みを増した古庄は、ハッとするような大人の男の魅力が倍増され、相変わらずどんな女性も虜にしてしまうほど完璧だった。


< 165 / 273 >

この作品をシェア

pagetop