恋は死なない。
その何度目かの定期検診の時のこと、産婦人科の病院で、佳音は花屋の店主にバッタリと出会ってしまった。
「あら、佳音ちゃん。どこか調子が悪いの?」
店主は気さくに声をかけてきてくれたが、いきなりすべてを打ち明けてしまうのはためらわれて、佳音は逆に聞き返す。
「お花屋さんこそ、どうなさったんですか?」
「私はね、更年期障害なのよ。たまにここへ来て、ホルモンの注射を打ってもらうの」
佳音はそれを聞いてうなずいた後、今度は自分の事情を説明する必要に駆られた。
花屋の店主に話してしまうと、すぐに商店街の人々にも知られてしまうだろう。でも、妊娠していることは、遅かれ早かれ気づかれてしまうことだ。
佳音は覚悟を決めて、切り出した。
「私は、妊娠しているので、検診に来てるんです」
「……え?妊娠って……?」
未婚であるはずの佳音が妊娠していることは、やはり不自然なことだった。戸惑う店主の表情を見てしまうと、どう説明するべきか、佳音も言いよどんでしまう。
「番号札50番の方、中の長椅子にかけてお待ちください」
その時、看護師の声が響き渡る。50番は佳音の番号だった。
「すみません。呼ばれたので、今日はこれで……」
佳音はそう言い残して店主に一礼すると、中待合へと向かった。