恋は死なない。
その事実を聞いて、三人は唖然とした。そして、魚屋のおじさんは徐々に顔を赤くして、怒りを充満させた。
「なんだと……!それじゃ、自分は順当な人生を確保してる一方で、佳音ちゃんに手を出して弄んだってことだな!?こんな誠実そうなツラをして、とんでもねえ奴だ!!」
おじさんは、佳音の身になって言ってくれてるのだろうが、和寿のことをそんなふうに罵倒されて、佳音の心に鋭い痛みが走った。
「古川さんは、そんな人じゃありません。……私が古川さんのことを好きになったんです。古川さんも私のことを想ってくれてました。古川さんは婚約者を裏切り、私は仕事を裏切っている、許されないことをしているとは分かってました。だから、一度きりでいいって、そう思って、私から望んだことなんです」
必死で和寿を弁護する佳音を心配そうに見つめて、花屋の店主も口を開く。
「でも、赤ちゃんができてしまうと、そうは言ってられないでしょう?……その古川さんには、知らせてるの?」
佳音はその問いにも、静かに首を横に振った。
「彼はもう、関わり合いを持つことのない人ですから、知らせてません。一度は中絶することも考えました。……だけど、せっかく授かった命を消してしまうことはできませんでした」
佳音が切々と語ることに、三人もじっと耳を傾けた。
「だけど、子どもを一人で育てていくのは大変よ?その人と結婚はできないにしても、きちんと知らせて認知だけはしてもらった方がいいと思う」