恋は死なない。
「佳音ちゃん。あれだけ覚悟を決めてたけど、古川さんが戻ってきてくれて、本当によかったなあ!」
何も言葉が出てこない佳音に代わって、おじさんが言葉をかけてくれた。
「こんなところで立ち話なんてしてないで、工房に帰って二人でゆっくり話をした方がいいわね」
花屋の店主も、そう口添えしてくれたので、佳音は辛うじてうなずいて、和寿を見上げる。和寿も柔らかく微笑んで、佳音を見つめてうなずいた。
佳音がドレスを丁寧に折りたたんで、腕にかけ直すのを、和寿は隣でじっと見守り、それから二人で歩き出す。
「ちょっと、待って!!」
そのとき、魚屋の奥さんが声を上げた。そして、店の奥へと駆け込んでいくと、手に先ほどの花束を持って戻ってきた。
「これ、佳音ちゃんにあげる。持っていって」
これは奥さんの友達にあげるはずだった花束だ。その花束を手渡されて、佳音は戸惑ったように奥さんを見返した。
「私はまた別の花束を作ってもらうから。これは『お祝い』の印。幸せになるのよ!」
そう耳元で囁かれて、佳音は泣きそうな顔になりながら、やっとのことで言葉を絞り出した。
「……ありがとうございます」