恋は死なない。
花屋の時のデジャヴのような出来事に、佳音は目を見張るだけで言葉が出てこない。
「もう、今日はお花屋さんへは行かれたみたいですね」
和寿はそんな佳音の驚きはよそに、佳音の持ち物を見て、そう言って微笑んだ。
「お花屋さん」と聞いて、佳音の中にこの前の出来事が思い出される。お礼だけは、忘れないうちにきちんと言っておかなければならない。
「あの…!この前は、あんな立派な花束を頂いてしまって…、ありがとうございました」
手にあった雑誌を元の場所へと戻して和寿に向き直ると、佳音は深々と頭を下げた。
「いえいえ。僕の方も、もらってくれて助かりました。夜しかいない男の独り住まいにあるより、あなたに見てもらった方が花たちも幸せだったと思います」
和彦は、本当は初めから佳音にあげるはずだったということは、言わなかった。
それでも、佳音は不可思議そうに首をかしげる。
「…幸世さんに差し上げなくて、よかったんですか…?」
花を買ったのならば、普通は婚約者にあげるはずだ。佳音の思考は、至極当然だった。
すると、和寿の微笑みに苦みが混ざる。
「あの人は、好みがうるさくて、こだわりも強いっていうこと、あなたも知っているでしょう?僕が選んだ花を贈っても、きっと満足してくれないから」