恋は死なない。



そう言って励ましてくれる佳音の言葉に、和寿はじっと耳を澄ませた。

いつもはかなげに、そっと和寿に微笑んでくれていた佳音。いつも和寿は、そんな佳音を守ってあげなければ、と思っていた。その佳音がこんなに強い人だなんて、思いもよらなかった。
尊敬と信頼と、愛しさだけでない感情が和寿の中に溢れてきて、無意識のまま、佳音を両腕で包んで抱きしめた。


「……ありがとう。この夢を思い出させてくれたのも、君だった。君と出会えて、僕はやっと自分の人生を生きていると実感できた。僕は幸せになるために、君と出会ったんだと思う」


和寿に抱きしめられながら、佳音はその言葉を胸に刻み付けた。どんなに愛を囁いてくれるよりも、嬉しい言葉だった。これから和寿のために生きていけることが、何よりも嬉しかった。


「……こんな私に、あなたを幸せにできる力がある?」


和寿の腕の中から、佳音は和寿を見上げて尋ねてみた。和寿は佳音をじっと見下ろして、その頬を伝う涙を親指で拭った。


秋の夕陽を受けて、佳音は輝くように美しかった。和寿は言葉よりも先に、そっと佳音に口づけた。口づけながら、こんな素晴らしい人を伴侶にできた幸せを噛みしめた。


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