恋は死なない。
「は?何言ってるの?そんなこと考えてたら、オーダーメードなんて、初めからできないわよ」
「いや、でも。だいたいどのくらいになるのかでも、聞いておかないと」
「…んもう。こんなところにも、ビジネス根性が出るんだから。すぐに『費用』とか『採算』とか『リスク』とか…。私のドレスを仕事と同じに考えないでよ」
二人の怪しい雲行きに、佳音の耳が敏感になる。
これから夫婦になる人たちの、犬も食わない言い合いなのかもしれないが、自分の作るドレスのことでケンカをしてほしくない。
佳音は作業の手を休めて、ドレスの陰から顔を出した。
「…あの、後ほど、大体のご予算をお聞きします。生地の素材やレースの種類を変えることなどでも、デザインはそのままでお安くお作りすることも可能ですから」
最初にきちんと費用のことを伝えなかったのは、佳音のミスだ。それを申し訳なく思いながら、佳音は説明した。
佳音の言葉が耳に入ってきて、和寿は却って申し訳ないような顔をしたが、幸世は佳音の心配を払しょくするような表情を見せた。
「大丈夫です。一生に一度のことだから、妥協はしたくないの。だから、ここで作ってもらうことにしたんだもの。お金なんかは関係なく、自分が思う一番いいものを作りたいの」