恋は死なない。
和寿にとって、幸世と結婚して新たな人生を歩み始めることも、必死になって努力することなのだろうか……。
和寿の笑顔が、先ほどの朗らかなものと違って、佳音の目にはなんとも言えず寂しそうに映った。その寂しさを感じ取って、佳音の心も苦しくなってくる。
佳音は、和寿の幸せそうな笑顔が見たかった。その笑顔さえ見られれば、常に寂しさを抱えている自分の心も、パッと明かりが灯って暖かく満たされるような気がするから。
「……古川さんの、“夢”って、なんですか?」
不意に、その問いが佳音の口をついて出てきた。夢を語ることで、少しでも未来に対して、明るい展望を見い出してほしかった。
「……夢、ですか……?」
しかし、佳音の思惑はよそに、和寿は困ったような複雑な表情を浮かべる。そのまま黙ってしまった和寿を、佳音は祈るような気持ちで見守った。
そして、しばらくして和寿は静かに口を開いた。
「夢は、遠い昔はあったんですが……。今はそんなことも、思い描かなくなってしまいました」
それを聞いて、佳音も言葉を逸する。これでは、和寿に明るい気分になってもらうどころか、いっそう消沈した雰囲気になってしまった。
佳音は必死で言葉を探した。自分といる時の和寿には、穏やかな気持ちで笑っていてほしかった。何とかして、この沈んだ空気を払しょくしたかった。