恋は死なない。
テーブルの上に、和寿と幸世に出されたティーカップが、並んで残されている。そこに並んで座り、会話を交わす二人を思い出す。
一緒に来て一緒に帰っていったように、行動を共にする和寿と幸世は、まさに婚約者同士で、これから結婚するべき二人なのだと、まざまざと思い知らされる。
佳音がどんなに願いを込めて祈るように和寿を想っても、この事実は変わらない。
強く強く想っていれば、必ず叶えられる――。
そんな幻想を抱いても、決して叶えられないこともあると、古庄を恋い慕っていた時に思い知ったはずだ。
もう、和寿と二人きりで会ってはいけない。
佳音は、心が切り裂かれるような辛い決断をするしかなかった。これ以上幸世を裏切り続けるようなことをしてはならないと、今日の無邪気な幸世を見て思った。
この想いを抱えて和寿に会い続け、関わりを持てば持つほど、もっと想いは深まってしまう。
そしていつか、この想いを持て余して、爆発してしまうのが怖った。
和寿の感情など関係なく、一方的に想いをぶつけて、泣きわめいて駄々をこねて……。
……かつて、古庄に対してそうしてしまったように。まだ高校生だったあの時、感情が暴走して、自分で自分を制御できなくなった。
またあの時のようになって、和寿を困らせてしまうかもしれない。