砂糖菓子より甘い恋1
「手は、大丈夫。
 でも、頭がすごく痛いの」

「それはいけませんね。頭痛に効く薬があるから飲むといい。
 お腹もすいているでしょう?」

身体を起こした毬は、差し出されるがままに白い粉を水で流し込んだ。

「苦いっ」

毬は子どもらしく今にも吐きそうな顔をする。

「すみません。お口直しにいかがですか?」

桃色をした砂糖菓子を毬に渡す。

「甘くて美味しい♪」

「そうでしょう?毬姫に気に入ってもらえて良かったです」

「でも、私、お家に帰らないと……」

「左大臣様にもご了解いただいているので心配することはないですよ?」

うーん……と、毬は唇を尖らせる。

「雅之様にお答えしないと。笛、続けるって」

「雅之のことなら心配いりません。
 姫のお具合が悪いことを心配していましたよ。
 笛の話は姫が元気になられてからです」

「本当?だったらいいけど……」

毬は何かを考えるように唇を噛んだ。

「私、絶対怒らせちゃったんだもん」

今にも泣きそうに瞳を潤ませている。
ふあり、と、龍星の手のひらが毬の頭を撫でた。

「では、ちゃんと謝ればいい。
 それで赦してくれないような男から笛を習う必要はありません」

「本当に?」

ふぅ、と、龍星は息を吐く。
長い睫を軽く伏せる。その、整った顔から毬は目が放せない。

「姫には嘘をついたりしませんよ。だから、そう何度も本当かどうか確かめなくて大丈夫」

大丈夫、と言って、龍星が再び甘い微笑を向けるので、毬はなんだかほっとしてようやく口元を微笑ませた。
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