砂糖菓子より甘い恋1
四の一 鬼の聞く笛
毬は軽く食事を取って、庭の花を愛でていた。
荒れ野のように放ってあるその庭は、毬に嵐山を思い出させていた。
「気に入りましたか?」
縁側に座り込んで飽きることなく庭を眺めている毬に、龍星が声を掛ける。
「うん、この庭に降りてもいい?」
「どうぞ」
龍星がパチと手をたたくと、そこに履物が現れる。
「これ……」
「どうぞ」
呆気にとられる毬に、龍星は柔らかく笑って見せた。
毬は庭に下りて、花を一つずつ眺めては遊んでいた。
次第に日が翳ってくる。
毬は庭から上がり、書物を読んでいる龍星に声を掛けた。
「ねぇ、龍星様。
今日、雅之様ここにいらっしゃる?」
「約束はしてないので、分かりませんが。
呼びましょうか?」
「ううん。
どこに居るのか知ってたら、私、会いに行くわ」
「では、一緒に参りましょうか」
「……そんなの。
龍星様にご迷惑だもんっ」
ふるふると、毬は首を横に振る。
ご主人様の機嫌を伺う仔犬そっくりのその瞳と仕草に、龍星は笑いを隠せない。
そして、そのままふわり、と、龍星は簡単に毬を抱き上げた。
「きゃぁっ」
毬は怯えてというよりは、むしろ驚いて声を上げた。
「迷惑だったらこんなところに連れて来ないよ。
そんなに遠慮されたら淋しいな」
艶やかな紅い唇を、毬の耳元に近づけ、甘い声で囁くように言う。
思わず照れて頬を染める毬の様子を見つめ、楽しむかのように笑う。
「龍星……様……。
私、ちゃんと歩けるから」
「降ろして欲しいの?」
こくりと頷く毬は、まったくもって愛らしい。
「降ろしたら、一人でどっかに行ってしまうでしょ?」
「ここにいるからっ」
口付けされそうなほど顔が近づいて、毬は思わずそういった。
「そう、じゃあ約束ですよ?」
こくこくと、毬が頷くのを見届けてから、龍星はそっと毬を下へ降ろした。
荒れ野のように放ってあるその庭は、毬に嵐山を思い出させていた。
「気に入りましたか?」
縁側に座り込んで飽きることなく庭を眺めている毬に、龍星が声を掛ける。
「うん、この庭に降りてもいい?」
「どうぞ」
龍星がパチと手をたたくと、そこに履物が現れる。
「これ……」
「どうぞ」
呆気にとられる毬に、龍星は柔らかく笑って見せた。
毬は庭に下りて、花を一つずつ眺めては遊んでいた。
次第に日が翳ってくる。
毬は庭から上がり、書物を読んでいる龍星に声を掛けた。
「ねぇ、龍星様。
今日、雅之様ここにいらっしゃる?」
「約束はしてないので、分かりませんが。
呼びましょうか?」
「ううん。
どこに居るのか知ってたら、私、会いに行くわ」
「では、一緒に参りましょうか」
「……そんなの。
龍星様にご迷惑だもんっ」
ふるふると、毬は首を横に振る。
ご主人様の機嫌を伺う仔犬そっくりのその瞳と仕草に、龍星は笑いを隠せない。
そして、そのままふわり、と、龍星は簡単に毬を抱き上げた。
「きゃぁっ」
毬は怯えてというよりは、むしろ驚いて声を上げた。
「迷惑だったらこんなところに連れて来ないよ。
そんなに遠慮されたら淋しいな」
艶やかな紅い唇を、毬の耳元に近づけ、甘い声で囁くように言う。
思わず照れて頬を染める毬の様子を見つめ、楽しむかのように笑う。
「龍星……様……。
私、ちゃんと歩けるから」
「降ろして欲しいの?」
こくりと頷く毬は、まったくもって愛らしい。
「降ろしたら、一人でどっかに行ってしまうでしょ?」
「ここにいるからっ」
口付けされそうなほど顔が近づいて、毬は思わずそういった。
「そう、じゃあ約束ですよ?」
こくこくと、毬が頷くのを見届けてから、龍星はそっと毬を下へ降ろした。