『ゆる彼』とワケあり結婚、始まりました。
「理由(ワケ)…?」


頭の中に浮かぶ久城グループの記事。

ご兄姉のこと、おばあちゃんのこと、ご両親の事故、資産、財産ーーーー

どれも重い。

どれも似合わない。

何よりあたしは……



「選択する理由をそもそも間違ってたから……」



剛さん本人を見てなかった。

『ゆる彼』という名の理想の元に、彼を当てはめてただけ。

あたしの思うような人じゃない。
あたしが好きになっていい人じゃない……。



(好きになりかけてたのに……もう既に、恋は始まってたのに……)



ーー手の届かない人だと分かった。
彼の地位が凄すぎて、重圧を感じてしまった。

やっと掴んだ幸せも遠退くくらいの格差を知った。

彼に何かを求めるなんていけないことだと思った。

あの人には、何かを与えられ続けられる人が似合う。


あたしでなくてもいい…。


あたしでは間違いだーーーー!



「…とにかく荷物と一緒に迎えに来て。もう此処にいる必要は無くなったの。此処はあたしが住むべき場所じゃない。あたしには不似合いすぎる場所なの…!」


断言して電話を切った。

いつものマシンガントークも、無鉄砲で突拍子もない破天荒な性格も影をひそめる。

周りからしたら、いつものあたしの行動と同じだと思ったかもしれないけど……。



ーー今回は違うから。

極めて冷静に考えて判断してるから。

何もかも理想通りだと思い込んでた自分の間違いに気がついて、元の生活に戻るだけ。



ただ、それだけだからーーーー…。




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