『ゆる彼』とワケあり結婚、始まりました。
ぎゅっと抱きしめたら、きっと癒されると思うのよ〜と、妄想が炸裂してる。これまでにも散々な恋愛してきてるくせに、今回もまたか…と呆れてしまった。



「…その人、名前なんていうの?」

「んーと、久城 剛(くじょう たける)さん…?」

「年齢は?」

「33歳って書いてある」

「職業は?何してる人?」

「…アンティークショップの店員だって…」


カサカサ…いう紙の音が聞こえる。もしかして、愛理、今頃プロフィール確認してる…⁉︎


「愛理……あのさ…」


普通は写真よりも経歴重視でしょ…と言いかける私の言葉は、愛理の叫びによって遮られた。


「五人兄弟の末っ子⁉︎ やった!ラッキー!!」


キーン!と耳に響く大音量に思わず電話を遠ざける。私の声は、もはや愛理に届く様子もない。


「5人兄弟の末っ子ってことは、親の面倒見なくていいってことだよね⁉︎ 住所はマンションだから余計な固定資産税も関係なさそうだし、年収もまあまあだから生活には困らない。何より趣味、カラオケだって!あたしと同じ。気が合う〜!」


(……って、おいおい、気が合うかどうかは謎だって…)


愛理のトークに口も挟めずにいると、ヒートアップした愛理の妄想はますます膨らんでいく一方。


「結婚したら専業主婦していいか聞こう!ムリして働かなくてもいいよ…って、きっと言ってくれそうな気がする!そしたら朝から夜までラクし放題!夢にまで見た極楽ライフが送れるわ〜!お料理教室通おうかな…それとも、クックパッドでお勉強…?」


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