『ゆる彼』とワケあり結婚、始まりました。
家族会議を開こう!
久城家の廊下は、中庭を中心にした回廊形式になっていた。

回廊と言えばあたしの中では、過去に建てられたことがある認知症高齢者の施設が頭に上る。
何処へ行くかは本人も介護者も分からない人達が、迷子になったり離設しない様に…と造られた建物。
ぐるぐると施設内を回って過ごしながら、見守りもできる…との名目が理由だったらしいけど。


(今の介護方針から考えると、ホントに過去の産物だよね……)


医療だけではなく、介護の世界も日進月歩。少しずつ進化して複雑になってる。
お年寄りの持つ疾病の種類の多さや病の解明に伴って、日々、変化してるから…。



(この家なら…おばあちゃんは排泄の失敗をしないで済むんじゃないかな…)


案内されながら、ふとそんなことを考えてた。
おばあちゃんはいつも、夜中にトイレが分からなくて探し回ってた。
探すうちに失敗することだって多かった気がする。

お部屋からトイレへの道順は、今も自宅にお住まいだった頃の記憶で生活してるせいだ。


(剛さん達はどうしておばあちゃんを自分たちの住まいに呼び寄せて、持ち回りなんかで面倒を見るようにしたんだろう。ここでの暮らしが長かったおばあちゃんにとって、他の場所は不安と混乱を招くだけの居場所なのに…)


自分のことなど棚に上げ、彼の家族のことばかりを気にしていた。
伺ってみたいと思っていたご兄姉のことについて、いつ切り出せばいいか…と迷った。


< 198 / 249 >

この作品をシェア

pagetop