『ゆる彼』とワケあり結婚、始まりました。
急ぎ足で出かけていく人は、昨日の様な濃厚なキスもせずに部屋を出た。

よほど緊急な用事だったらしく、あたしのことはまるで見もしないで玄関ドアを閉めた。


置き去られた犬のような気持ちになって、閉まるドアを見つめた。
さっきの電話と言い、仕事の件と言い、久城さんには謎が多過ぎる。

加えて言うならこのゴールドカード。

ポン…とあたしに手渡して、勝手に大金使われたりしたらどうしよう、とか考えないのだろうか。


「つ、使い込む…とか、まずあり得ない話だけど……」


使い方すらもよく知らないのに困る。
確かサイン一つで何でも買えちゃうんだよね…と考えると、返って使うのが怖くなる。


…こんなの持たされたくない。
こんなの持たせてくれるくらいなら、電子マネーカードの方がまだマシ。

せいぜいチャージ分だけでお買い物。
それでも、贅沢過ぎるくらいだ……。

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