嘘つきスノウ 〜上司は初恋の人でした〜
入る手前で男女の話し声に気が付いた。
「三条、新幹線の時間遅れるなよ」
「朝9時とか早過ぎるわ〜。わたし8時には家を出ないと。そしたら6時起きよ?」
「はいはい、女は大変だよな。身支度にも時間がかかって。いっそスッピンでくれば?」
「いいなあ、池上は。新幹線乗るのに15分やもん。あーんな素敵な高層マンションに住んで、こないだ行ったとき夜景があんまり綺麗でびっくりしたわ」
心臓が大きくどくんっと跳ねる。
いけない。
これはわたしが聞いてはいけない話。
くるりと方向を変えて、自分の席に戻った。パソコンをシャットダウンして帰り支度をし、カップはデスクの上に置いたままにして周りへの挨拶もそこそこに部屋を出ようとしたところで誰かにぶつかる。
「成海、顔色が悪い。大丈夫か?」
外回りから帰ってきた小早川さんがわたしの目の高さまで膝を曲げ、額に手をおいた。
「熱はないみたいだけど・・・・・」