嘘つきスノウ 〜上司は初恋の人でした〜
池上くんに急かされるように食堂を後にした。トイレに入り、簡単に化粧直しをしながらさっきのことを思い出した途端、顔が火を噴く。
あんな小さな子供にするような・・・・・。
池上くんがウチで土曜日を過ごしたのはもう2回になる。
いい歳した男と女なのに、「そういう」雰囲気になったことなんて1度もない。
食堂でのことといい、そういうことなんだと理解する。
わたしは彼の中では女ですらない。
そもそも、異性として意識されているならウチに来るわけないのだ。それが残念なのか、嬉しいことなのかわからない。
背後でバタンっと乱暴にドアが開いた。
「千雪っ!何なのあの男っ!」
奈々が勢いよくトイレに飛び込んでくる。
「・・・・・奈々?」
「なんでわたしが『お節介も度を過ぎると迷惑だよ』って叱られるのよ!」
奈々の声が大きくて、思わず周りを見回し、わたしたち以外に誰もいないことを確認した。