嘘つきスノウ 〜上司は初恋の人でした〜
池上くんがもう止めると言うまではこのままでいたい。
食べ終わったお皿やカップを持って席を立つ。シンクに置いて洗い、水切りカゴに入れていった。冷蔵庫の中のものを確認して、買い物してくるものを考えながら、ふとリビングを見る。
微かな寝息。
規則正しく呼吸とともにお腹が上下し、胸の上には読みかけの文庫本。
年末で取引先と忘年会も多いからーーー。昨夜も確かそうだったはずだ。
ウチに来ないでしっかり家で寝て疲れをとったらいいのに。
リビングの隣の部屋の寝室の襖を開け、押入れからブランケットを出す。起こさないように文庫本をそっとどけて、ブランケットをかけた。
少し疲れた顔。
触れるか触れないか、微妙な距離まで顔を近付ける。
「大好き・・・・・」
囁くように声に出してみる。
10年前に言えなかった、たった一言。
もう言えない一言。
ほろりと落ちた涙に気付かないフリをして、飽きることなく池上くんの寝顔を見ていた。