この度、友情結婚いたしました。
「なっ……バカ!なに抱き着いてんだよっ」

「だったら戻って!」


私達が立ち止まっているのは、横断歩道の途中。
青信号だからいいようなものの、いつまでも信号が青のままなわけがない。


「ほら、早くしないと信号変わっちゃうから!」

なにも言わない琢磨に強く言うと、彼は渋々了承してくれたようで力を弱めた。

そのままふたりで元の場所へ戻ると、ちょうど横断歩道の信号は赤に変わり、車の往来が始まった。


「なぁ、まどかはなにも思わないのか?……さっきの見て」

さっきまでの勢いを失くし、私の真意を探るような目で問いかけてきた彼の声に、ドクンと胸が鳴る。

「だって普通は怒るところだろ?……それかショックを受けるじゃん。なのにまどか、全然動じていない」


鋭い指摘に目が泳いでしまう。


でもこればかりは仕方ない。
法律上、私達は夫婦になっているけれど、心までが夫婦になったわけではないのだから。

だから春樹が浮気しようが私には何も言う権利がない。

それを琢磨に伝える術がなく、ただ黙ってやり過ごすことしかできなかった。
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