この度、友情結婚いたしました。
冗談に聞こえずギョッとしてしまう。

このままだと、あさみは本気で春樹の首を絞め落としてしまいそうだ。

同じ女なのに、どうしてあさみってば昔から力だけは男性並みに強いのだろうか。

必死にあさみの手を引っ張るも私の力では敵わず、いよいよ春樹がやばい状況に陥りそうになってしまった時。


「なにやってるんだよ、こんな公衆の面前で」


あれほど私の力では引き離すことができなかったというのに、がっちり掴んだと思ったらいとも簡単に春樹の首元から、あさみの腕を引き離した。

そしていまだ興奮状態のあさみを、呆れたように見下ろしているのは琢磨だった。


「え――、琢磨……?」


目を見張ってしまう中、春樹は苦しそうに必死に酸素を取り入れており、あさみはというと、やっと落ち着いてくれたのか私同様、突然現れた琢磨に目を疑っている。


「あさみお前なぁ、女のくせになにやっているんだ。今の状況、通行人から警察に通報されても文句言えなかったぞ!?どう見ても、二股された女が男に逆上している図だ」

声を荒げる琢磨に、さすがのあさみも押し黙ってしまった。


そうだった、あさみは昔から琢磨に言われると何も言い返せなくなっちゃうだっけ。

どうしてここに琢磨がいるのか分からないけれど、とにかく助かった。

おまけに私達、琢磨の言うように相当注目を集めてしまっているようだし。
中には立ち止まってこっちの様子を窺っている人たちもいる。


「大丈夫か、春樹。けど相変わらずだな、女のあさみに力で負けるとか」

一瞬気遣った言葉を掛けたかと思えば、途端に琢磨は鼻で笑ったものだから、当然春樹の逆鱗に触れてしまった。


「うっせぇ。それよりもどうしてお前が家の近くにいるんだよ!……まさか性懲りもなく、また家に押しかけてくるつもりなんじゃねぇだろうな」
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