この度、友情結婚いたしました。
「珈琲豆も派手にぶちまけたな」

「……はい」


ぶちまけましたとも。琢磨の声を聞いただけで動揺しまくりました。

ますます顔が上げられない状況に陥っていくと、急に琢磨は子供をあやすように頭をポンポンと撫でてきた。


「悪かったな、そうさせたのは俺だろ?だけどごめん。俺はまどかが動揺してくれてるの、すっげ嬉しいよ」

「――え」


頭には琢磨の手が優しく触れたままだったけれど、顔を上げずにはいられなかった。

けれど、すぐに顔を上げてしまったことを後悔してしまう。
だって琢磨は視線が釘づけになってしまうくらい、目を細め甘い瞳で私を見つめていたから。


「それって少しは俺にも脈があるって証拠だろ?……だから悪いけど俺、付け込むから」

「琢磨……」


なにこれ、胸がキューって鳴って仕方ないんですけど。
学生じゃあるまいし、なに素直に胸キュンなんてしているのよ、自分!


盛大な突っ込みを入れている間も、琢磨は愛しそうに私を見つめ頭を撫で続ける。


「今日の昼には一度こっちに戻ってくるから、一緒に食事しよう」

「え、食事?」

「あぁ、ハンバーグの美味しい店に連れていってやるよ。まどか、昔から好きだったじゃん」


ダメだ、鳴るな二十八歳の胸!

琢磨は幼なじみみたいなもので、付き合っていたんだから私の食べ物の好みを知っていて当たり前じゃない!……ただ別れて十年以上経つのにも関わらず、覚えてくれていたのが嬉しかったわけで。

必死に頭の中で言い訳をしていると、琢磨はなぜか堪え切れなくなったように噴き出した。
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