この度、友情結婚いたしました。
給湯室を覗くように立っていたのは、こちらを見てはニヤける真希さんで、さっきまでの一部始終を見られていたのかと思うと、居たたまれなくなる。

恥ずかしすぎて近くに穴があったら逃げ込みたいくらいだ。


「いやいや、こんな狭い事務所内で聞くなって言う方が難しいわよ、たくちゃん。だけどなに?いつの間にふたりってばドラマみたいな急展開を迎えたわけ?」


あぁ、いよいよ居たたまれない。
お願いですから真希さん、それ以上突っ込まないで下さい。


けれどそんな私の願いは虚しく真希さんも給湯室内に入ってきて、さらに深く追求してきた。


「ついにたくちゃんの儚い恋心がまどかちゃんに届いたのかしら?いいじゃない!今どき浮気不倫なんて日常茶飯事なんだから。たくちゃん!円満離婚に持ち込めばこっちのものよ」


弁護士事務所の中で交わされる会話とは思えない内容に、目を見張ってしまう。


でものり気な真希さんの挑発には決して乗ることなく、琢磨は呆れたように溜息を漏らし、額を押さえ項垂れてしまった。


「勘弁して下さい。……どうせそのうち追及されそうだから言っておきますけど、俺本気でまどかを奪うつもりでいるんで。あまりからかってまどかを困らせないで下さいね」


琢磨……。


釘をさすように言うと、一瞬目が合ってしまう。
すると琢磨は困ったように眉を下げハニカミ、「悪い」と口パクしてきた。

せっかく胸キュンが収まったというのに、そんなことされちゃったらまたキュンとしちゃったじゃない。


それからも琢磨は外に出るまでの間、散々真希さんや出勤してきた俊哉さんにイジられていたけれど、私に矛先がいかないよう配慮してくれていた。
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