この度、友情結婚いたしました。
琢磨の背中を見送った後、ポツリと声が漏れてしまう。

もう後悔したくないと思うし、あんなに喜ぶ琢磨を見たら間違ってないと思うけど……。
それなのに、なぜだろう。心の奥で春樹の顔が浮かんでしまうのは。


最初の約束でお互いのプライベートには干渉しないことって決めたじゃない。

最近は春樹が勝手に騒いでいるだけで、またすぐにいつもの春樹に戻るかもしれないし。


それなら私だって琢磨と映画に行くくらい、いいよね。
私は浮気じゃないもの。……そうだよ、春樹みたいに浮気しに行くわけじゃないもの。


そう言い聞かせてもなにか胸の奥に詰まった物がある気がして、モヤモヤするばかり。
そんな時、ふと感じた視線。


視線の先を追い掛けるも、通行人が行き交っているだけで誰も私のことなんて見ていなかった。


「気のせい……かな?」

確かに誰かに見られているような気がしたんだけど。


気のせいには思えなくて周囲を見回していると、近くにあった時計に映し出されている時間を見た瞬間、ギョッとしてしまう。

「やばっ急いで戻らないと!」


感じた視線のことをすっかり忘れてしまい、慌てて事務所に戻っていった。




「よし、春樹はいないよね」


仕事を終え、やってきたのは我が家のアパート。

春樹は仕事だと思うけど、もしかしたら……と不安が頭をよぎり、まるで泥棒のように我が家に電気が点いていないことを確認していた。


けれどやっぱりまだ帰ってきていないようで真っ暗。
今のうちに取りに行ってさっさとあさみの家に帰ろう。
< 292 / 379 >

この作品をシェア

pagetop