この度、友情結婚いたしました。
「まっ、私は断然琢磨派だから、今の状況に不満はないけどさ。せいぜい後悔しない選択をしなさいよね」

「……分かってる」


言われなくてもちゃんと分かっているし、考えているよ。


「とりあえず明日の琢磨とのデート、楽しんできたら？……ふたりっきりで過ごして見えてくる気持ちもあるんじゃないの？」

「うん……」


そう言うとあさみは立ち上がり、「明日も私は仕事で早いから先に休むね」と言うと、私の肩を数回叩き、寝室へといってしまった。

パタンとドアが閉まる音が聞こえてきたと思ったら、怖いほどリビングはシンと静まり返ってしまった。


「見えてくる気持ち……か」


異様に響く自分の声。


あさみの言うように、琢磨と明日ふたりっきりで過ごすことで、見えてくる気持ちがあるのだろうか。


あの日から琢磨は変わらず優しくて……いや、優しすぎて困るくらいだった。

真希さんと俊哉さんにどんなに冷やかされようと、いつも私のことを気遣ってくれて、不慣れな仕事も丁寧に教えてくれている。

仕事には真面目に取り組んでいて、優しくて私のことを一番に考えてくれていて……。

昔からそうだったけど琢磨と一緒にいると、心が穏やかに過ごせる。
つまらない言い争いもしないし、イラッとすることもない。


このまま琢磨と一緒にいられたらって思ったら、不安になる未来など想像できないし。


それなのにな。どうして私の心の片隅には、あのバカがいるんだろう。
あんな喧嘩しちゃったわけだし、本気で琢磨に奪われてもいいと思うのに、喉に魚の骨が引っかかっているかのように、気になって仕方ないんだ。
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