ENDLESS
苦しい……
そう泣いて、君は、俺の部屋を出ていった。
きっと、もう、帰ってはこないだろう。
そのつもりで、最後に、全てを語ったのだ。
俺は、君を、追いかけなかった。
後ろめたさと、罪悪感に、縛られ、
動けなかった。
冬の、穏やかな、午後。
君がいなくなった部屋は、広いようで狭い。
君が隣にいないベッドも、広いようで狭い。
俺は、そこに、ぼんやりと寝転んでいる。
ちらりと、ローテーブルを見やると、
君が置いていった、藤崎先生の本がある。
そうだ、俺は、それを、知っている。
それは、高校時代に、藤崎先生が勧めてくれたものだ。
そう、難しい本で、だが、理解しようと必死に読んだ。
その本の内容を理解したかったのではない、その本を気に入っている藤崎先生を理解したかったのだ。
「その気持ち、伝わってたのか……」
だから、わざわざ、その本を選んで、
俺の写真を挟んだのだろう。
「何でだよ……俺のこと振ったくせに、さっさと新しい家族つくって、届かねぇとこ行っちまったくせに……」
そう、俺は、高校時代に、藤崎先生に振られている。
それでも、俺は、藤崎先生が忘れられなくて、
届かなくとも、少しでも近くにと、藤崎先生と同じ国語教師になり、さらに、藤崎先生の家の近くにある学校に勤めることを決めたのだ。
ああ、そうだ、そうして、俺を見つけて欲しいと、俺を思い出して欲しいと、願った。
「叶ってたのかよ……そんなこと、今さら知ったって……」
それなのに、俺は、藤崎先生を過去にしてしまった。
いつから過去になったのかは、曖昧なままでいい。
はっきりと思い出したところで、
藤崎先生を過去にしてしまった、今が、変わることはないからだ。
「藤崎先生……俺は……」
それどころか、俺は、藤崎先生の子、そう、君を、愛してしまった。
「ももが好きだ……」
そう呟いて、
藤崎先生への後ろめたさと、
そんな自分を隠して近づき、できるなら隠したまま繋ぎ止めておきたかった俺の狡さで、苦しめ、泣かせてしまった、
君への罪悪感に、
ただただ、苛まれる。
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