フキゲン課長の溺愛事情
「だって、知り合いってどういう知り合い? 男? 女?」

 沙織のツッコミが厳しくなってきて、璃子は心の中で、エレベーターよ、早く来い、と念じる。その甲斐あってか、すぐにエレベーターの扉が開いた。乗り込みながらさりげなく答える。

「お世話になったことのある人」
「で、男? 女?」
「男」

 沙織に訊かれて、璃子は嘘がつけずについ正直に答えてしまった。

「えーっ。もしかして独身?」
「うん」
「部屋を貸してくれるってことは、その人と璃子って親しいんでしょ? 山城くんと別れたんだし、恋愛関係になったりしないの?」
「ないなぁ。そんな気になれないし、向こうにだってその気はないと思う」

 達樹は思ったよりも話しやすいし、今朝などは『ご所望のキスもしてやろうか』と言われたが、あれはどう見ても璃子をからかっただけだ。

「そうなんだ。まだつらいよね……」

 沙織がしんみりと言った。また悲しい気分に襲われそうになって、璃子はわざと明るい声を出す。
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