フキゲン課長の溺愛事情
「でも、もう泣かないって決めたの。啓一のためにいつまでもめそめそしない」
「それでこそ璃子だよ。山城くんよりいい男なんてたくさんいる!」
「でも、出会えるかどうかわかんないけどね」

 小さく肩をすくめる璃子に、沙織が言う。

「きっと大丈夫だよ! これからの日本に必要なのは、璃子みたいに仕事と家事を両立できる女性なんだから」
「両立かぁ……。なんかもう疲れちゃった。啓一にあんなに一生懸命尽くしたのに、こんな結果になっちゃったんだもん」
「そっか……。じゃあ、今はなにも考えないで、心を癒やす方が先だね。部屋のことでは力になれなくてごめんね。でも、私は璃子の味方だよ」
「ありがと」

 エレベーターが一階に着いてドアが開いた。ふたりで並んでオフィスビルの自動ドアから外に出る。西の空にはまだ少し夕焼けが残っていて、ほんのりとバラ色をしていた。

「それじゃ、私、こっちだから行くね」

 OSK繊維開発の正門を出たところで、沙織が璃子に向き直った。

「うん、バイバイ」
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