フキゲン課長の溺愛事情
「なんだ、まだ起きてたのか」

 璃子がダイニングで座っているのを見て、達樹が言った。

「うたたねはしてましたけど。それより、課長、夕食はすみましたか? 肉じゃが作ったんで、よかったらどうぞ。温めますよ」

 璃子が向かい側の席の皿を示したとき、達樹が表情を曇らせた。

「悪い、食べてきた」
「あ、そうなんですね。いいですよ、気にしないでください。自分のを作るついでに作っただけだし、明日、自分のお弁当に入れますから」

 璃子が片付けようと皿に手をかけるのを、達樹が言葉で止める。

「ちょっと待て。水上がせっかく作ってくれたんだから、食べてみたい」
「無理しなくていいですよ」
「無理などしていない。バーで軽くつまみながら飲んできただけだから、満腹ってわけじゃないんだ」
「じゃあ、温めますね」

 璃子は立ち上がってキッチンに向かった。達樹がネクタイに指を入れ、緩めながら椅子に腰を下ろす。いつもきっちりしているので、その着崩した感じが新鮮だ。

 璃子は対面式キッチンから達樹に話しかけた。
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