フキゲン課長の溺愛事情
 人事課長まで味方につけているとは。

「うちがお願いしたのは、ストックホルムのエコタウンのパンフレットの和訳一件だけです。それについては、四国でのエコタウン計画のために国内事業課も必要としています。特許の出願が時間との闘いなのは承知しています。けれど、四国でのエコタウン計画も、後回しにできない重要なもののはずです」
「それはつまり、キミはわざと和田さんに大量の仕事を押しつけているわけではない、と言いたいのか?」
「その通りです。和田さんがすべての翻訳業務を担ってくださっているので、事業の拡大に翻訳者ひとりという現在の体制が追いつかなくなっているのではないでしょうか」

 璃子は中村の顔を見ながら控え目な口調で続ける。

「差し出がましいようですが……和田さんは特許関係の翻訳がお得意なようですから、それ以外の翻訳を担当してくれる派遣社員をもうひとり派遣会社に探してもらうか……翻訳業務を外注するというわけにはいかないでしょうか」
「人を雇うとなるとなかなか簡単にはいかないからな。だが、和田さんの状況を考えると、検討してみる価値はあるな」

 中村は相変わらず渋い表情をしているが、口調は少し和らいだ。

「ほ、ホントですか?」
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