フキゲン課長の溺愛事情
 ふたりで「いただきます」と手を合わせた。璃子は待ちきれない思いで、すぐにサラダを口に運んだ。

「うわあ、チキンの皮がパリッとしてて、野菜のほくほくした感じと合いますね! ドレッシングも元気の出る味!」

 璃子が食べるのを見て、達樹が目もとを緩める。

「水上の機嫌が直って元気になるのなら、朝からがんばった甲斐があったかな」
「あ、やっぱり、きっと手間がかかりましたよね? こんなのを調べて作るなんて、やっぱり課長ってマメですね~」
「水上と暮らすようになってから気づいたんだ。こういうのも意外と楽しいんだなって」
「こういうのって?」
「誰かのために料理をすること」

 達樹が小さく咳払いをした。照れているのを隠しているようだ。

(課長って会社では無愛想だけど、でもやっぱりイケメンだし、こんなに料理上手でよく気がつくんだから、モテるはずよね……。なのに、今も独身で恋人もいないのはどうしてなんだろう。なにかものすごい欠点があるとか……?)

 そう思ったとき、達樹の言った『俺は泣かせた方だ』という言葉を思い出した。
< 158 / 306 >

この作品をシェア

pagetop