フキゲン課長の溺愛事情
「こっちへ」

 そして薄い壁で仕切られた応接室を示した。部長に続いて璃子もその部屋に入る。

「まあ、座りなさい」

 部長に言われて、璃子は彼が黒いソファに座った後、向かい合うソファに腰を下ろした。ゴクリと唾を飲み込んで、部長の第一声を待つ。

「水上さんは広報室に勤めて五年が経ったな」
「はい。今年で六年目になります」
「新設の部署で、最初は大変だっただろう?」

 話の流れから、どうやらお叱りを受けるわけじゃなさそうだと思って、璃子は肩の力を抜いた。

「そうですね……。でも、当時は高井田室長にご指導いただき、現在も監督していただいているおかげで、私も河原崎も青葉もしっかり業務をこなせていると思います」
「その高井田課長だが……そろそろ総務部広報課の仕事に専念したいそうだ」
「ええっ」

 まさか環境都市開発部広報室が解散になるのか、と不安になる璃子に、部長が丸い顔に笑みを浮かべて言う。

「そこで、水上さんに広報室長になってもらおうかと思ってな」
「え」
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