フキゲン課長の溺愛事情
 服を着て髪を乾かしメイクをして、達樹と落ち合う約束の休憩室に向かった。そこにはL字型のソファがあって、新聞を読んだり飲み物を飲んだりしている老若男女の姿があった。けれど、その中に達樹の姿はない。

(課長はどこかな……?)

 奥の方にマッサージチェアとリクライニングソファがあって、どちらにも人が横たわっている。

「あ」

 近づいたら、一番奥のリクライニングソファに、目を閉じてゆったり身を預けている達樹の姿を見つけた。

(こうして見ると、課長って彫りが深くてきれいな顔してる……)

 閉じた瞳のまつげは長く頬に影を落としていて、すっと通った鼻筋が美しい。薄めの唇がセクシーに見える。

(あの唇にキスしちゃったんだ……)

 そう思うと、今さらながら恥ずかしくなってきた。手で顔をパタパタと扇いで熱を冷ましてから、声をかける。

「課長、お待たせしました」

 けれど、彼はぴくりとも動かない。いや、正確には胸が上下しているので、うたた寝でもしているのだろう。
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