フキゲン課長の溺愛事情
「璃子なら大丈夫だよ」
「そう?」
「ああ、自信持っていい。璃子は俺の惚れた女性だ」

 その言葉がうれしくて、璃子の頬が締まりなく緩んだ。それをごまかすように、真面目な口調で言う。

「今日は来てくれてありがとう。おかげで両親にも認めてもらえたし」
「どういたしまして。俺は璃子がおもしろい理由がわかってよかったよ。ああいう楽しい家庭で育ったからなんだな」
「あー、またおもしろいなんて言う」

 口では不満そうに言いながらも、璃子にはわかっていた。達樹の璃子に対する〝おもしろい〟は、彼の愛情表現なのだ。

「でも、たまには素直に〝かわいい〟って言ってほしいなぁ」

 璃子がチラッと見上げると、街灯の明かりに照らされて、達樹の穏やかな笑顔が見えた。

「そうだな。ベッドでならいくらでも言ってやる。うんと甘やかしてかわいがってやるよ」
「やだ、もう」

 璃子が照れて笑うと、達樹がいたずらっぽく言った。
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