フキゲン課長の溺愛事情

第三節 予期せぬプロポーズ!

 九月下旬のある日曜日。チャペルの細長い窓ガラスから差し込む明かりが、中を厳かに照らしている。

 祭壇には若い牧師。その前に向かい合って立つ純白のドレスの花嫁とタキシードの花婿。

 今日は啓一と友紀奈の結婚式だ。友紀奈の希望で、たくさんの会社関係者、友人、親戚が呼ばれ、盛大で豪華な結婚式が開かれている。璃子は会社関係者の並ぶ後方の席で、この式に参列していた。

(結局、啓一は和田さんに振り回される人生を選んだんだね)

 啓一とカフェで話してから璃子と彼がふたりきりで話すことはなく、あれから五ヵ月後の今、啓一は友紀奈とこうして結婚式を挙げている。友紀奈は現在妊娠五ヵ月だという。

「和田さんって次の派遣契約、更新しないんだってね」

 璃子のすぐうしろから、ひそひそと話す声が聞こえてきた。璃子の年下の女性社員たちで、式に退屈しているのか、周囲に聞こえていないと思っているのか、押し殺した声で話を続けている。
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