フキゲン課長の溺愛事情
　そこへ当の優太が出社してきた。いつものようになにも考えていないような明るい笑顔でオフィスに入ってくる。

「おはようございまーす。あ、水上さんだ」
「青葉くん……」

　璃子は彼に向き直り、深々と頭を下げた。

「金曜日は迷惑をかけて本当にごめんなさい」

　優太は驚いたように胸の前で両手を挙げた。

「やだなあ、気にしないでください。俺、あんなふうに女性に積極的に迫られたのって初めてで、ドキドキしちゃったくらいなんですから」

　優太の言葉に璃子はびっくりして顔を上げた。

「ええぇっ」
「なんて、冗談ですよ。俺、酒癖の悪い姉がふたりいるんで、ああいうのには慣れてます。水上さんが素直に謝るなんて珍しいから、ちょっとからかってみただけです」
「失礼なっ。私、自分に非があるときはちゃんと認めて謝るわよっ。それに先輩をからかうなっ」

　璃子に睨まれ、優太が両手をぶんぶんと振った。

「お、怒らないでくださいよっ。それより水上さん、無事だったんですね？」
「無事って？」
「藤岡課長に送ってもらったんですよね？」
「送ってもらったっていうか……」
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