フキゲン課長の溺愛事情
 沙織に気遣うように見つめられて、璃子は「あはは」と力なく笑う。

「ごめん、元気出して仕事に励む! ストックホルムでの成果をPRすることが私たちの仕事だもんね。迷惑をかけた藤岡課長のためにもがんばらないと」
「璃子」
「新しい部屋が見つかったら、家電とか家具とか全部持って出て行ってやろうかな。啓一には空っぽになった部屋を返してやる。そのくらいの憂さ晴らしをしたってバチはあたらないよね」

 璃子が言ったとき、優太が口を挟んだ。

「そんなことをしたら相手は喜ぶんじゃないですか? 元カノと買った家具を処分する手間がかからなくてすむって」

 沙織が優太をじろりと睨んだ。

「あんたってやつは」
「だって、ホントのことでしょ? 水上さんが新しい彼女だったら、彼の家に元カノと買った家具があったら嫌じゃないですか?」

 優太に言われて、璃子は唇を引き結んだ。

「じゃあ……残していったら捨てられちゃうかもしれないのか……」
「まあ、俺としては余計な金を使いたくないから、そのまま置いて行ってくれた方がありがたいですけど」
「どっちなのよ、あんたの意見は参考にならん」

 沙織がプリプリしながら言った。そんな彼女をなだめるように、璃子は話を切り替える。
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