フキゲン課長の溺愛事情
 漠然としか把握していない内容をしっかり理解すべく、説明文を読む。

(えっと、微生物を含む活性汚泥を用いて、排水中の有機物を分解し、その活性汚泥と処理水とを膜を使って分離して水を浄化・処理する技術、か」

 そうして浄化した水を農業や産業に利用して、集落――達樹たちの場合はエコタウン――内で水を循環利用しようとするのが、ストックホルムのエコタウンでOSK繊維開発が従事しているプロジェクトだ。そして、その実績をベースに日本でプロジェクトを行うのが国内事業課で、新たに海外向けプロジェクトを企画・提案するのが海外プロジェクト課という構造になっている。

 達樹の関わっていたプロジェクトについて、知識をひと通り頭に入れた後、インタビューのアポイントを取るべく彼に社内メールを送った。

(課長がいつも不機嫌そうなのは忙しいからなのかなぁ)

 意外といい人かもしれない、とは思ったが、彼が普段から無愛想なのには、なにかわけがありそうな気がする。

(まだストックホルムにいたかったとか? 恋人はいないって言ってたから、ストックホルムに彼女を残してきたはずはないわよね)

 考えてみたところでわからない。

 忙しいのだとすればアポの返事はすぐに来ないだろうと思って、璃子はコーヒーを淹れに給湯室に向かった。シンク横に置かれたポットからお湯を注ごうとしたが、中は空だ。
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