フキゲン課長の溺愛事情
「それじゃ、今日も一日がんばりましょう!」

 璃子はそう言って、自分にも気合いを入れた。

 自分のデスクについて、パソコンに向かう。璃子の席は、かつて高井田室長が使っていた席で、窓を背にしたいわゆる〝上司席〟だ。もとは沙織と向かい合う席を使っていたが、室長と入れ替わる形で新入社員の優太が入ってきたため、さすがに新人が上司席に座るのは……ということで、沙織とじゃんけんをして負けた璃子が席を移動したのだ。

 まずは目下の任務――藤岡課長へのインタビュー――のため、エコタウンのウェブサイトの英語版にさっと目を通す。璃子は大学時代、交換留学生としてカナダの大学で一年間勉強したので、経済開発関連の英語はわかる。とはいえ、特許や工学関連の専門用語には疎いので、専門的な文書の翻訳となると、やはりスキルの高い派遣社員に頼ることになる。

 エコタウンの公式サイトの内容はそれほど専門的ではないが、出てくる単語はなかなか手強かった。

「Membrane Bioreactor……メンブレン・バイオリアクターの日本語訳ってなんだっけ」

 ブツブツと言いながら、デスクのパソコンにインストールされている辞書で検索する。

「あ、そうそう、膜分離活性汚泥法ね」
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