フキゲン課長の溺愛事情

 ようやく落ち着いて、SUVに乗せられて達樹のマンションに到着したときには、すでに九時半を回っていた。駐車場から十階のピンクのカーテンの部屋まで三往復して荷物を運び、さらにリビングからソファベッドを運び入れる。ロータイプのソファベッドなので、思ったほど重くはなかいが、リビングから廊下を通るというのがなかなかの重労働だ。

「誰か男に手伝わせればよかったんだが、頼む時間がなかったんだ」
「だ……いじょうぶです」

 達樹の合図で斜めにしながら部屋の入口から運び込み、ふたりで協力してカーテンのそばに置いた。

「これで今晩は問題なさそうだな」
「はい、ありがとうございます」

 璃子はソファを持って疲れた両手をブラブラと振った。達樹は璃子がふぅと息を吐くのをじいっと見ていたが、思いついたように言う。

「水上はお好み焼き、好きかな?」
「え?」
「腹減らないか? 作るから一緒に食べよう」
「私、そんなに……」

 お腹は減ってない、と言おうとしたが、気持ちとは裏腹にお腹がキュルキュルと音を立てた。

「わ」
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