まるでペットのような彼
あの姿は…

かつて、付き合っていたが、若い彼女と結婚してしまった人…


その姿を認識したときに、足を止めてしまった。


その彼が信号で振り返り、私の方をみる。
見つけられたと思ったら、近寄ってきた。

「郁美。久しぶり。」

「あ…久しぶり…」

呼び捨てにするなんて…
もう彼女でもないのに…

「元気そうだな。なんだか、前より色っぽくなった?」

「え…神田さんこそ、お元気そうで…」

「…他人行儀でヤダな。それ。前みたいに俊哉って読んでくれよ。」

「いえ…もう、付き合ってるわけじゃないし…」
この人、あんな振り方して、結婚までしてるのに何言ってるんだろ?

「久しぶりに会ったんだから、飲みにでも行かない?」

「いえ。帰ります。」

「つれないな~。あんな別れ方したから、拗ねてるの?」
そう言いながら、手を伸ばして私を掴もうとする。

「やめてください。」

その手を振り払って、駅に向かおうとしたら、ぐっと手首を掴まれて引き寄せられてしまう。

「あんまりじゃん。あんなに愛し合ってかわいがったのに、忘れちゃった?」

「過去の話しです。離さないと大声だしますよ。」

「いいよ。ここ会社の側だよね。会社の人に俺と付き合ってるって言っちゃうよ。」

「そ…そんな…嘘…」

「嘘だって、相手には、わからないよな~」

「なにがしたいの?」

「ま、とにかく飲みに行こう。」

そう言った彼に仕方なくついて行ってしまった。






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