ぼくらのストロベリーフィールズ







「あーーー疲れたーー! お客さん多かったねー」



次の日――日曜の夜に、父は出張先に戻っていった。


繁華街から住宅街に続く道を一吾くんと歩く。



「てかさ、何でいんの? 店に」



うわーめちゃくちゃ機嫌が悪いぞー。



「やっとメニュー全部覚えたよ。てか、一吾くんキッチンだし料理できるんじゃん?」


「だから何で? ……ちっ」



私が同じお店でバイトを始めていたことは、彼にとって想定外だったようで。



ただでさえ急に休んだことを店長に怒られたのに、

バイトくんに私とのことを冷やかされ、一吾くんは終始むすっとしていた。



「だって一吾くん抜けたせいで、お店忙しそうだったから」



「…………」



「ま、とりあえず。今日からまたお世話になりまーす」



ニコーっと笑って挨拶すると、一吾くんは横から私の髪の毛をぐしゃっと撫でた。



そのまま頭をぐっと引き寄せられる。


おっとっと、とバランスを崩しながら私は彼の肩にぶつかった。



触れた部分から、ワクワクした気持ちがぱーんと弾けそうになった。



しばらく私の頭はその肩に固定されていたけど。


急に肩を押され、彼から離されてしまった。



私は再び不規則な足音を響かせることに。



「ちょっとー何ー?」



うるさいくらいに胸がドキドキしている。



「ニヤけすぎ。キモい」


「ひどい!」


「いてっ」



一吾くんに触れるたびに嬉しさが増す。


だからこそ『手は出さない』という彼の言葉がどこか引っかかっていた。



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