ぼくらのストロベリーフィールズ
☆
「あーーー疲れたーー! お客さん多かったねー」
次の日――日曜の夜に、父は出張先に戻っていった。
繁華街から住宅街に続く道を一吾くんと歩く。
「てかさ、何でいんの? 店に」
うわーめちゃくちゃ機嫌が悪いぞー。
「やっとメニュー全部覚えたよ。てか、一吾くんキッチンだし料理できるんじゃん?」
「だから何で? ……ちっ」
私が同じお店でバイトを始めていたことは、彼にとって想定外だったようで。
ただでさえ急に休んだことを店長に怒られたのに、
バイトくんに私とのことを冷やかされ、一吾くんは終始むすっとしていた。
「だって一吾くん抜けたせいで、お店忙しそうだったから」
「…………」
「ま、とりあえず。今日からまたお世話になりまーす」
ニコーっと笑って挨拶すると、一吾くんは横から私の髪の毛をぐしゃっと撫でた。
そのまま頭をぐっと引き寄せられる。
おっとっと、とバランスを崩しながら私は彼の肩にぶつかった。
触れた部分から、ワクワクした気持ちがぱーんと弾けそうになった。
しばらく私の頭はその肩に固定されていたけど。
急に肩を押され、彼から離されてしまった。
私は再び不規則な足音を響かせることに。
「ちょっとー何ー?」
うるさいくらいに胸がドキドキしている。
「ニヤけすぎ。キモい」
「ひどい!」
「いてっ」
一吾くんに触れるたびに嬉しさが増す。
だからこそ『手は出さない』という彼の言葉がどこか引っかかっていた。